top of page
9月7日
読了時間: 1分


________________________________________



ー 五、角


「もしもの時は、重くなり過ぎたその角を、自ら切り落とすことができるようにと。」



角はいつの間にか、また大きく、より膨らみを増し、

気づけばどうしようもない重さとなっていた。

身体にのしかかるその重さで、もう足を出すこともできない。

待つことしか、もうなかった。



あれほど頑なに握りしめていたものは、なんだったのだろうか。

角は切り落ちたはずなのに、

なにも失っていない感覚だけが残った。




私の中に、まだ種はあり、これから先もまた

その姿を見せてくるだろう。

その度に、落ちて、また忘れて、気づいて。


そう、まだ、しばらくは。


けれど、この先のどこかで、

足元に落ちた角を、懐かしく見ている自分がいるのだろう。

これがあったからこそ、と。

土に還ってゆく姿を、微笑ましく見つめている自分がいるのだろう。




(『A Record of Cogitations.』より) 

 
 

© Kasumi Suzuki  All Rights Reserved

 

掲載画像の無断転載・複製はご遠慮ください。

bottom of page