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「その、気配を待つ」


まだ陽が昇る前の薄暗い空。静けさの中に降る雪。

白い息、鼻にかかる冷たい空気。

静まり返った中に、カメラを乗せたソリを引く音が響いてる。

膝下まで埋まる雪の道を少し重そうに一歩一歩と進めた足音が残る。

引きずるソリの後ろをキツネが、とことこと、ついていく。

ソリを止め、時折立ち止まっては、

後ろを振り返り、キツネとじーっと見つめ合う。

キツネにか自身にか、何かを言うようにか言わないようにか。

そして、また足を動かし始め、森の奥に向かう。

雪は深々と降り続いてる。2人の上に雪が降り積もってゆく。


しばらく、その雪原を歩きゆく景色が続き、

すーっと、今度は、森の奥からの映像に切り変わる。

そこにいる動物たちが山にやってくるその気配に気付き、

顔を上げ、やってくるその気配を見つめて待っている。

姿はまだ見えない。でも近づいてくるその気配を確かに感じて、

その姿を森の奥から。じっと見つめて、待っている。



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ーこの作品を描いてる時

そんな映像がずっと私の頭の中で繰り返し、繰り返し、延々と流れていた。


その映像の中にいたのは、

数年前に遠別町の道の駅の天井画を製作した時に知り合った写真家の泊さんだ。

あれ以来、色々な話を聞かせてもらってきた。

遠別の森の中、山の中で、見てきたもの、撮ってきたこと。


以前、私の個展会場で、こんなイメージでと、選んで下さった作品を元に製作していった。

個展に並べてたその作品はまた違うストーリーを持っていたが、

自然と製作中にずっと頭に流れていた映像と物語は、

遠別の舞台で、〝撮影に向かう〟泊さんと、遠別の森と生き物たちだった。


泊さんと、その後を追うキツネ。その気配を待つ、森の生き物たち。


2月の半ば、泊さんの新しい写真集の出版記念の写真展に行ってきました。

会場で逢えた写真たち、その一枚一枚の中に流れている物語り。

帰ってきてから、写真集をゆっくり眺めながら、その奥に流れている物語を想像していた。











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