El sur エル・スール
南へ
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アトリエで作品の出し入れをしていた時のことだ。
ちょうどアトリエに来ていた友人がこんなことを言ってきた。
「エル・スールって作品、あったよね?」
私が創った作品で、ということだ。
「エル・スール?いや、創ってないと思うけど・・・」
「なかったっけ? 南に、、、向かうとかそんな題の。」
思い浮かんだのは、「南へ向かう群れをみた」という作品だった。
それをいうと、そのことらしく、彼はその作品をみた時に、
エル・スールという言葉でその作品は彼の中に記憶されたらしい。
El sur /エル・スール
1983年、ビクトル・エリセ という人がつくったスペイン映画だそうだ。
El surは、〝南〟という意味だそうだ。彼はその言葉と重ねて記憶してたんだろう。
私の中から「El sur /エル・スール」とというキーワードが離れなくなった。
不思議なのだが、こんなことがある。
ある時期に同じ言葉、同じキーワードが、
あらゆる多方面から、自分の耳に入ってくる、という現象だ。
今回、このエル・スールという言葉を聞いてから
〝南〟というキーワードと出逢うことが多々あった。
精神的面や、今回の作品に用いた材料のことやら。
作品とは、
その時その時で、持つ意味が変化するものだと思っている。
と、いうよりも、私の場合はまだ途中段階で見えている、という感覚もある。
今回の会場をぐるっと一周した最後に、
一点だけ、アクリルで水彩紙に描いた作品がある。それが、
「南へ向かう群れをみた」という名をつけた作品だ。
これを描いたのは、ある時、空の上から、みた景色だったのだが、
眼下に広がる景色や雲らが、まるで生き物のように変化し、
それらが南へ向かって行ってるように見えたからだ。
あの日みたことを、記録しておこうと描いた作品だった。
なぜ彼らは、南へ向かっているのだろう。私にも分からなかった。
「 南へ」
私に入ってきたいくつかのそれに関するはなし。
今の時点で私が感じたことを、作品に落とし込んでおこうと思う。
自ら作り上げてしまった小さな檻を抜け出して、描きなさい。と。
南へ。
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